直播と地下点滴潅がいによる水稲-コムギ輪作体系の生産力と環境負荷低減効果の検証
日本学術振興会:科学研究費助成事業 基盤研究(B)
Date (from‐to) : 2021/04 -2025/03
Author : 豊田 正範; 当真 要; 諸隈 正裕; 水田 圭祐
本研究は直播と地下点滴潅がい栽培による水稲-コムギの輪作体系における生産性と温室効果ガス排出量削減による環境負荷低減効果の検証が目的である.本年度は香川大学農学部内の畑地と水田の両試験圃場にて,水稲-コムギ輪作の栽培試験を実施した.
水稲栽培では,畑地圃場の点滴潅がい区に点滴チューブを地表面からの深さ20cmに埋設した.6月15日に種子間隔3cmのシードテープを条間30cmで1畝につき6条を播種した.水田の湛水栽培区には6月17日に株間15cm,条間30cmで移植した.点滴潅がい区の日々の潅水量は推定蒸発散量と作物係数により決定し,降雨の際は適宜潅水を控えた.湛水栽培区は代かきから成熟期の収穫直前まで常時湛水状態とした.生育期間中には地上部乾物重,葉面積,積算吸収日射量,葉齢,茎数,SPAD値などの調査を定期的に実施した.点滴潅がい区の全乾物重,全籾数,穂数は湛水栽培区を上回っていたが,登熟歩合,玄米千粒重,収穫指数は湛水栽培区より低かったため,結果的に収量は湛水栽培区と同水準となった.
生育期間中は毎週1回,圃場から排出される二酸化炭素(CO2),亜酸化窒素(N2O),メタン(CH4)フラックスをチャンバー法により測定した.
水稲の収穫後にコムギ品種さぬきの夢の栽培を実施した.畑地圃場と水田の前作跡に裁断した前作の稲わらを散布して耕運機で浅く耕起し,種子間隔2.5cmのシードテープを条間25cmで播種した.播種日は畑地圃場が11月16日,水田が11月18日である.畑地圃場では播種作業は順調で,発芽,苗立は良好であった.一方,水田では播種時に土壌が過湿状態で発芽,苗立も不良であった.このため,水田では比較的発芽が揃っている一部区画のみを調査対象としている.成熟と収穫時調査は5月下旬の見込みであり,その後,できるだけ速やかに水稲栽培を開始する予定である.