印環細胞癌との鑑別を要した子宮内膜の偽脱落膜化の1例
土井 貴司; 小林 省二; 羽場 礼次; 石川 雅士; 串田 吉生; 門田 球一; 舩本 康申; 松永 徹; 大野 正文; 秦 利之
病理と臨床 2005年11月 (株)文光堂
52歳女.4年前に右乳癌,2年前に左乳癌で乳房温存術を施行され,以後酢酸メドロキシプロゲステロンおよび抗癌剤を内服していた.定期的に内膜細胞診や経腟超音波検査を施行していたが,約5ヵ月前から不正器出血が出現し,経腟超音波で内膜肥厚を認め,内膜掻爬生検を行った.その後も酢酸メドロキシプロゲステロン療法を継続し,初回生検から1週間後に再生検を行った.病理学的に初回生検で採取した内膜組織は印環細胞様を示す細胞が充実性に増生し,これらの細胞は偏在する核と淡明な細胞質内空胞を有していた.細胞質内空胞は単〜多房性のものがみられた.被験組織の一部には通常の偽脱落膜細胞がみられ,印環細胞様の偽脱落膜細胞と移行する像もみられた.特殊染色では粘液は認められず,免疫組織化学的にvimentinが強陽性で,上皮系マーカーが全て陰性であった.再生検で採取した内膜組織には印環細胞様の細胞に壊死がみられ,周囲には泡沫状の組織球や好中球の浸潤,出血を認めた