最低賃金政策の再分配効果:企業ミクロデータによる検証
日本学術振興会:科学研究費助成事業
研究期間 : 2022年04月 -2027年03月
代表者 : 木村 寛子; 乾 友彦; 滝澤 美帆; 山ノ内 健太; ソン ソクジュン
最低賃金には、もともと低賃金労働者に最低限の所得を保障する役割が期待される。賃金上昇を通じて企業から低賃金労働者へ所得の再分配が行われるため、最低賃金上昇のコストは企業が負うと思われがちだ。しかし、市場の競争環境や企業の反応次第では、雇用量の削減や製品価格の上昇という形で、労働者や消費者も政策のコストを負担することがあり得る。また、技術革新が進む中、最低賃金の上昇が機械やAI技術による労働の置換えを加速させるならば、企業の生産性やスキル需要への影響を通じて想定外の帰結が生じる可能性もある。本研究の目的は、日本において最低賃金が本来の目的を果たしているか、どのような副次的効果があるかを複数の企業ミクロデータから明らかにすることにある。具体的には、考えられる企業側の反応について、(1) 製品価格、(2) スキル需要、(3)生産性の3つの観点から分析を行い、再分配政策としての最低賃金制度を評価する。日本でエビデンスの蓄積が少ない側面に焦点を当て、最低賃金上昇の影響がどの経済主体に帰着するかを明らかにする。
2022年度の研究では、政府統計のデータの申請およびクリーニングを行った。また、各テーマについて識別戦略を検討したり、メカニズム精査についての議論を進めた。最低賃金が採用に与える影響についての研究では、既に日本語で出版したディスカッションペーパーを改訂し、国際査読誌に投稿するための準備を進めた。