加齢性骨格筋減少症における腸内フローラ機能の役割
日本学術振興会:科学研究費助成事業 基盤研究(B)
研究期間 : 2020年04月 -2023年03月
代表者 : 桑原 知巳; 豊田 敦; 刑部 有希; 世良 泰; 川崎 淨教; 高見 英人; 今大路 治之
本研究は、高い身体能力を維持している高齢者とサルコペニアが疑われる高齢者の腸内フローラを機能面から比較し、その違いを明らかにすることを主目的にしている。今年度は、マスターズ陸上参加者と一般高齢者を対象として解析を進めた。
運動習慣のある70歳以上の高齢者と運動習慣のない高齢者より身体能力データ(インピーダンス法により算出された骨格筋量、握力、立ち上がりテスト)とFFQgによる栄養摂取データを収集した。身体能力データによる階層的クラスタリング分析により、身体能力の高いグループと低いグループに2分した。同時に便検体を用いた16Sメタゲノム解析を行い、身体データとの相関性を解析した。その結果、身体能力の高いグループは低いグループと比較し、エンテロタイプが明瞭であることが明らかとなった。食事解析では身体能力の高いグループでは香辛料などの嗜好品の摂取量が低い傾向が認められた。また、マスターズ陸上参加者では、芋類・穀類の摂取量が多く、腸内細菌叢中の歯周病関連細菌の占有率が有意に低いことが示された。以上より、運動習慣のある高齢者と一般の高齢者では栄養摂取や腸内フローラ組成が異なる傾向があることを示唆するデータが取得できた。