教員の人事評価と職能開発プログラムに関する国際比較研究
日本学術振興会:科学研究費助成事業
研究期間 : 2002年 -2003年
代表者 : 八尾坂 修; 堀井 啓幸; 佐藤 晴雄; 古賀 一博; 坂本 孝徳; 柳澤 良明
日本と諸外国の人事評価研究の成果
わが国において一考を要する観点として,研究対象のほとんどの国が人事評価を定期昇給と連動させていることである。韓国のように勤務成績評定を昇進のみに連結させる国もある。人事評価と能力開発の一環として研修を義務づけるのは,特にアメリカ(教員,校長対象),ロシアにおいて明白である。優秀教員としての報奨的システムは,中国,イギリスにおいて顕著である。フランスのように教員の人事評価において,勤務態度を校長,指導力全般を視学官が評価するように評価領域によって評価者が異なる国も存在する。ただし中国においては社会環境整備の問題,タンザニアにおいては教員倫理の問題が内在化している。しかし課題は表出しているものの,能力と業績にもとづく人事評価システムはいずれの国もむしろ日本よりも先行しているといっても過言ではない。透明性,納得性のもと,評価結果の開示と面談,不服申立て,さらには教職員団体も参画する多面的評価も導入されている。人事評価導入の社会的・経済的・文化的背景は異なるが,平均主義からの打破の理念のもと,システム面,運用面での絶えざる検討を図ることがわが国においても共通の課題として残されている。支援・育成・自省の理念のもと人事評価を実施することが期待されるが,評価者の「部下である教職員を感じさせ,動かすシンボリックでしかも人間味のある変革的リーダーシップ」も不可欠である。