加齢性骨格筋減少症における腸内フローラ機能の役割
日本学術振興会:科学研究費助成事業 基盤研究(B)
研究期間 : 2020年04月 -2023年03月
代表者 : 桑原 知巳; 豊田 敦; 刑部 有希; 世良 泰; 川崎 淨教; 高見 英人; 今大路 治之
超高齢化社会を迎え、健康寿命の延伸が喫緊の課題となっている。腸内フローラは宿主の栄養吸収、免疫、精神活動と密接に関連し、筋肉組織の代謝にも大きく影響する。加齢に伴う筋肉量減少(サルコペニア)は要介護状態へ移行する大きな要因であり、その背景には高齢化に伴う筋肉組織の同化抵抗性(アナボリックレジスタンス)がある。アナボリックレジスタンスの解消は筋タンパク質合成を維持し、サルコペニア予防の鍵となる。本年度はマスターズ陸上の参加者より協力の得られた高齢者21名の腸内フローラの組成解析と便中短鎖脂肪酸定量を行った。その結果、門レベルの腸内フローラ組成に基づくクラスター解析によりA, B, Cの3つのグループに区分された。このグループ化に大きな要因を与える菌群はBacteroidetes, Firmicutes、Actinobacteria、Proteobacteria、EuryarchaeotaおよびVerrucomicrobiaであり、AはEuryarchaeota およびVerrucomicrobia、BではFirmicutes、CではActinobacteriaが他のグループと比較して優位であった。便中短鎖脂肪酸定量では明確なグループ化はできなかったが、コハク酸とiso-吉草酸、n-酪酸が高いグループが検出された。便中短鎖脂肪酸のパターンは腸内フローラ菌組成と相関しておらず、今後、菌組成と強い相関を示す機能モジュールを検索する予定である。