本邦で実施される腎移植の約9割は生体腎ドナー(以下ドナー)に依存している。多くのドナーは腎臓の提供を後悔することから生じる「健康関連QOL(health related quality of life: HRQOL)の悪化」に直面することが明らかとなっている。本研究では、移植医だけでなく精神的評価、治療を専門とする臨床心理士が介入し、早期からドナーの精神的健康の低下を予測し、HRQOLの低下の予防法を開発することを目的としている。そこでドナーのQOLや解決構築度尺度に関する研究を継続している。
これまでのSF-36によるQOLと解決構築度尺度の関連を検討してみたところ、症例数がまだ少ないためか有意な関連(解決構築度尺度の有用性)は証明できなかった。またドナーの解決構築度尺度のアンケートの回収率、特に術前に病棟で依頼したアンケートの回収率が非常に悪いことが判明した。2020年11月から2023年5月の間、回収率は16/29名(55.2%)であり、スタッフに改めて研究内容やアンケート回収について周知を行った。2020/11月から2024/2月までの間に研究に同意が得られたドナー37名のうち、術前、術後3ヶ月ともにアンケートを回収できたのは21名であり、うち回答に不備があった1名を除いた20名について解析を行った。術前と術後3ヶ月での解決構築度尺度の点数(平均値、標準偏差)はそれぞれ49.00±5.57、48.95±7.22とほとんど変化がなかった。ドナー各々における術前と術後3ヶ月での解決構築度尺度の点数にも相関が得られなかった(R2=0.0229)。面談については臨床心理士の協力がえられており、ほとんどのドナーに対して行えているが、引き続き症例数を増やして検討をすすめる予定である。