腸内細菌叢と脳との双方向情報伝達機構の解明-ストレスによる肥満易発症の分子基盤
日本学術振興会:科学研究費助成事業 基盤研究(C)
研究期間 : 2018年04月 -2022年03月
代表者 : 三木 崇範; 太田 健一; 鈴木 辰吾; 横山 俊史; 割田 克彦; 金西 賢治; 日下 隆
生後早期脳発達期における母子分離ストレスが惹起する脳と末梢(腸管)の双方向シグナル伝達機構の破綻の可能性と将来の肥満・生活習慣病との関りについての知見をえることを目的とした研究である。 Wistar系新生仔ラットを、離乳前の2-20日齢、6時間/日 母仔分離し、脳発達期のストレス曝露モデルを作製している。対照群は、母獣と共に通常飼育した。21日齢と63日齢で、大腸内糞便を開腹により採取した。糞便サンプルからゲノムDNAを抽出し、16S rRNA領域配列を参照して解析した。Real Time PCR法、次世代シーケンサーによるメタゲノム解析にて腸内細菌叢解析を行った。メタゲノム解析では次世代シーケンサーを用いて腸内細菌叢の動態変化の網羅的な解析を実施した。
ストレス曝露した動物においては、21日齢において、腸内細菌叢のうちある特定の種Proteobacteriaの変化を認めた前年度までの結果を踏まえ、63日齢において同様な解析を行った結果、有意な変化は消失していた。一方、脳の解析としてmedial prefrontal cortex, mPFCを対象として、抑制性ニューロン・γオシレーションに関与するparvalbumin mRNA発現量の経時的動態変化を解析した結果、21日齢に有意減少を呈した。また、IL-1β、TNFαmRNA発現量が有意に低下しており、これは炎症性のマーカーとしての解釈からグリア細胞の関与が示唆されることが明らかとなった。この結果は報告者がこれまでに得た行動解析の知見との整合性から、生後早期のストレス暴露が脳の正常な発達に歪を惹起していることを示唆する所見と解釈した。