公益財団法人中部電気利用基礎研究振興財団
公益財団法人中部電気利用基礎研究振興財団:(公財)中部電気利用基礎研究振興財団 出版助成
研究期間 : 2023年01月 -2023年12月
代表者 : 助川信太郎
論文概要(日本語)
目的:口腔擦過細胞診は低侵襲、低コストでかつ容易行うことができるため、臨床において口腔癌、前癌病変に対する有効なスクリーニング方法です。しかしながら、その診断は複雑であり病理医にとっても多くの経験を必要とする。近年、深層学習はさまざまな医用画像分類に有効な方法として使用応用されています。特に、畳み込みニューラルネットワーク(CNN)の高い精度でのパフォーマンスを実現するオプティマイザーとしてのsharpness aware minimization(SAM)の使用は、深層学習のさまざまな分野で注目を集めています。本研究の目的は、深層学習を使用した口腔剥離細胞診の良悪性の分類精度を向上させるための最適化アルゴリズムとして異なるオプティマイザーと学習率スケジューラーの併用による診断パフォーマンスから最適化アルゴリズムを決定し、その有効性を検証しました。
方法:口腔擦過細胞診バーチャルスライドをOpenslideにてタイルにカットしたデータを使用しました。切り出した全てのデータに対して口腔病理専門医がそれぞれにラベリングを行いました。 CNNはVGG16を選択し、SGD(Stochastic Gradient Descent : 確率的勾配降下法)とSAMがオプティマイザーとして選択しました。それぞれは、300エポックで学習率スケジューラーの有無ごとに分析しました。パフォーマンスメトリクスは、accuracy, precision, recall, specificity, F1 score、ROC曲線下の面積(AUC)に使用され、パフォーマンスメトリクスの統計および効果サイズの評価も各モデル分析に対して30回行いました。
結果:SGDとSAMいずれのオプティマイザーにおいても、学習率スケジューラーを使用した方が診断パフォーマンスが向上しました。特に、SAM効果量はaccuracy(11.2)とAUC(11.0)といずれも’Huge’に相当しました。 SAMは、学習率スケジューラを併用したすべてのモデルの中で最高のパフォーマンスを発揮しました。( accuracy =0.9016, AUC = 0.9328)また学習曲線による評価ではSAMは、SGDと比較して過剰適合を抑制する傾向がありました。
結論:この研究では、SGDまたはSAMをオプティマイザーとして使用し、学習率スケジューラーを使用する場合と使用しない場合の、口腔剥離性細胞病理学的分類の効果的な深層学習モデルを検討しました。学習率スケジューラーによって導入されたSAMを使用したCNNモデルは、限られた数のエポックで最高の分類パフォーマンスを示し、過剰適合を抑制することができました。これらの結果は、最適化アルゴリズムによる深層学習分類を用いることで口腔擦過細胞診における一次スクリーニングに非常に重要な役割を果たすことが期待できます。