Examining the effectiveness of a program to increase self-complexity in depressed people
Japan Society for the Promotion of Science:Grants-in-Aid for Scientific Research Grant-in-Aid for JSPS Fellows
Date (from‐to) : 2010 -2011
Author : 川人 潤子
本年度は,うつ病患者を対象として,自己複雑性と抑うつとの関連を検討するために,横断調査を実施した。その結果,肯定的自己複雑性と抑うつに負の関連が認められ,否定的自己複雑性と抑うつに正の関連が認められた。そこで,調査を元に,うつ病患者を対象とした介入プログラムを実施した。前年度作成した肯定的自己複雑性を高める介入プログラムを改訂・実施し,抑うつや人生への満足感への効果を検討することを目的とした。うつ病患者数名を対象に,5時点(介入プログラム前,2週間後,1ヶ月後,3ヶ月後,6ヶ月後)の調査票による効果評価を行った。また,対象者には,実施についての意見や感想も求めた。その結果,数名の患者は,介入プログラム後に肯定的自己複雑性が高まり,介入プログラム実施後に抑うつが低減し,人生への満足感が増加することが認められた。しかし,対象者の中には,抑うつが低減しない者も認められた。対象者の感想として,肯定的な自己の側面に注目しづらいという報告があった。横断調査結果が示したように,うつ病患者にとって,肯定的自己複雑性のみならず,否定的自己複雑性からの抑うつへの影響を考慮する必要があったと考えられる。そこで,介入プログラムの改善点として,否定的自己複雑性と抑うつの関連に注目し,否定的自己複雑性を低減するような内容に変更することが必要と考えた。そして,今後は,改善した介入プログラムを実施・検討することを計画している。