大規模パネルデータに基づく青少年の「生きづらさ」の形成要因に関する総合的研究
日本学術振興会:科学研究費助成事業
研究期間 : 2022年04月 -2027年03月
代表者 : 原 清治; 松浦 善満; 山内 乾史; 大多和 直樹; 作田 誠一郎; 長谷川 誠; 小林 元気; 竹内 正興; 浅田 瞳
本年度の研究実績は以下のとおりである。
1.いくつかの調査協力校においてアンケート調査を実施した。実施校は10校2,425名である。分析の結果、2023年度のネットいじめ発生率は前年度2.1%より上昇し、5.9%であった。また、ネットいじめの内訳をみると、それまでのLINEの書き込み(56.3%→31.5%)やオンラインゲーム(50.0%→43.3%)について数値が下がる一方で、その他(29.2%→57.0%)を選ぶ生徒が多くなっていることも明らかになった。これは、コロナ禍を経て、子どもたちのネットいじめの場が多様化したことを示していると考えられる。
2.調査分析を進めていくと、いじめや不登校などの背景に共通しているのはそうした状況を見ているだけの傍観者の存在であることが明らかになってきた。彼ら彼女らがいじめであれ不登校であれ、その行動を助長していたのである。
こうした課題を解決する方略として、諸外国の状況を概観すると、英国やフィンランドで導入されている傍観者を減らすいじめ防止プログラムに着目した。とりわけ、先進諸国で導入されているいじめ防止プログラムkivaの本場であるフィンランドで情報収集を行った。kivaプログラムは、2010年代にフィンランド国内すべての学校に導入されていたが、その効果は限定的なものであり、現在は導入率が40%にまで低下していること、いじめをされる友達の気持ちに寄り添うといった子どもたちの共感的理解にkivaプログラムは有効である一方、いじめをしてはいけないという認知的理解には影響していないという点が指摘された。また、いじめの発生率もコロナ禍以降増加しており、わが国と同様の傾向を示していることも明らかとなった。