根粒菌エフェクターの宿主標的分子同定と共生シグナル活性化機構
日本学術振興会:科学研究費助成事業 基盤研究(B)
研究期間 : 2019年04月 -2022年03月
代表者 : 岡崎 伸; 田淵 光昭; 下田 宜司; 林 誠; 箱山 雅生
1. 根粒菌エフェクターORF5208(以下5208)はULP(ubiquitin-like protease)相同領域を有する。ULP領域が宿主との共生に関与するか明らかにするため、ULP領域の活性中心のアミノ酸置換変異体を作成した。変異体をダイズEn1282(nfr変異体ダイズ)に接種して共生能力を調べた結果、全ての変異体がダイズEn1282との共生能力を失った。この結果からULP領域が5208の根粒形成誘導能力に必須であることが明らかとなった。
2. 5208タンパク質の生化学的作用を明らかにするため、大腸菌発現系を構築した。GST(Glutathione S-transferase)を融合した5208タンパク質を大腸菌内で発現誘導し、SDS-PAGEで解析した結果、目的タンパク質と予想される分子量付近にバンドを確認し、さらに抗5208抗体を用いたウェスタンブロッティングで当該バンドが5208タンパク質であることを確認した。
3. 大腸菌で発現させた5208タンパク質を精製し、ダイズの根抽出液を基質としてSUMO除去活性について検討した。SUMO除去活性は、抗SUMO抗体を用いたウェスタンブロッティングにより評価した。その結果、5208タンパク質による明確なSUMO化は観られなかった。5208タンパク質の基質濃度が低く、現在の実験条件では検出できない可能性が考えられた。
4. 5208により宿主側に引き起こされる遺伝子発現をRNA-Seq解析により解析した。根粒菌野生株と5208破壊株をそれぞれ接種したダイズの根を回収、RNAを抽出し、RNA-Seq解析を行った結果、サイトカイニン合成系遺伝子の発現上昇、エチレン生合成遺伝子、WRKY転写因子、Chalcone synthaseなど防御応答関連遺伝子の発現抑制が検出された。