局所的がん免疫療法の遠隔効果を増強する要因の解明
日本学術振興会:科学研究費助成事業
研究期間 : 2023年04月 -2026年03月
代表者 : 久保 博之; 内田 俊平; 門脇 則光
予備的な検討として,In vitroでのウイルス力価測定,悪性黒色腫細胞株B16-nectin-1を用いてT-01特異的DNAであるgBのPCR実験を行い,1JのUV照射でウイルス複製能の消失・ウイルス感染能のわずかな残存,5JのUV照射でウイルス感染能・複製能が共に消失することを確認した.次にT-01,1J-UV-T-01, 5J-UV-T-01を用いて,B16-nectin1に対する殺細胞効果実験を行い,1J/5J-UV-T-01で殺細胞効果が消失することが確認された.以上の結果より,B16-nectin-1に対する直接的殺細胞効果にはT-01の感染・複製能が重要であることが示唆された.
次に,ELISAで樹状細胞から分泌されるIFN-αの比較を行い,UV-T-01はUV照射量に関わらず,T-01と同等に樹状細胞を刺激し,IFN-αを産生していることを確認した.
以上の結果を元に,C57BL/6Jマウスの両側側腹部にB16-nectin-1を皮下接種し,一方のみにT-01または1J/5J-UV-T-01を腫瘍内投与し,試験薬投与側の直接的殺細胞効果,試験薬非投与側の遠隔効果を評価した.感染・複製能が消失した5J-UV-T-01の直接的殺細胞効果は大きく減弱し,試験薬非投与側の遠隔効果は消失した.一方で,感染能がわずかに残存する1J-UV-T-01は直接的殺細胞効果・遠隔効果は減弱するものの残存した.以上の結果から,In vivoにおけるT-01の遠隔効果には腫瘍細胞へのウイルス感染能が特に重要である可能性が示唆された.
感染後のウイルス複製が生じない悪性リンパ腫細胞株E.G7-OVA-nectin1を用いて同様のマウス検討を行ったところ,感染・複製能が消失した5J-UV-T-01の直接的殺細胞効果・遠隔効果は消失し,T-01の遠隔効果に感染能が重要であることが再度示された.