矮性甲州ブドウ育種に向けたオーキシン早期応答遺伝子を介する新梢長制御機構の解明
日本学術振興会:科学研究費助成事業
研究期間 : 2023年04月 -2026年03月
代表者 : 榎 真一
強樹勢ブドウ品種は新梢の栽培管理が難しく、果実の収量や品質の低下を招きやすいという問題がある。しかし、新梢伸長メカニズムは未だ不明瞭である。「植物ホルモン(PGR)のブラシノステロイド(BR)は強樹勢ブドウ「甲州」の新梢を伸長させる」という過去の課題成果を基に、本申請では各PGRの相乗効果に着目した。モデル植物では、BRとオーキシン(Aux)の相乗的な細胞伸長効果および「オーキシン早期応答遺伝子群SAURファミリーによるH+-ATPase活性化を通じた細胞伸長効果が知られる。事前実験では、ブドウの新規「VvSAUR50」が慣行品種に比べて甲州で高発現していたが、VvSAUR50と新梢伸長の関連は不明である。以上より、強樹勢ブドウでは『BRとAuxの相乗効果を受けたVvSAUR50が、細胞伸長シグナルを増強し新梢伸長させる』という仮説を提唱する。本申請では仮説を遺伝子レベルで証明すると共に、得られた知見を活かした矮性ブドウ育種を目標とする。
その結果、①甲州および基準品種であるピノノワールの新梢の網羅的遺伝子発現およびqPCR解析は、甲州の幼齢組織(生長点、葉、葉柄、茎)において、VvSAUR50ファミリーのうちNO.3の遺伝子が有意に高い事を明らかにした。②単離したVvSAUR50-3の系統解析は、この遺伝子が高度に保存されたSAURdomainを持つSAURファミリーであり、オーキシン応答性モチーフを有する事を明らかにした。③VvSAUR50-3過剰発現シロイヌナズナのT3世代のロゼッタ葉形質は、葉幅や葉長に有意差は無かったものの、野生型よりも形質転換体において葉柄長の値が有意に高く、細胞伸長が生じていた。これらの結果から、ブドウのVvSAUR50-3遺伝子がシロイヌナズナの葉柄長の成長を促進する機能を持つことを示した。