結婚の歴史再考――フランスの事例から見る(ポスト)結婚、生殖、親子、家族
日本学術振興会:科学研究費助成事業 基盤研究(B)
研究期間 : 2020年04月 -2024年03月
代表者 : 増田 一夫; 原 和之; 園部 裕子; 小門 穂; 長谷川 まゆ帆; 尾玉 剛士; 森山 工; 佐藤 朋子; 伊達 聖伸; 藤岡 俊博
初年度である2020年度は、同性婚合法化にいたる過程、および合法化を受けての生命倫理法改正を研究の二大焦点と位置づけて、研究をスタートさせた。
年度前半は、コロナ禍によって研究条件は深刻な制約を受けた。キャンパスへの入構および図書館の利用が制限され、対面による海外研究者との意見交換が実質的に不可能となった。教育の場での対応にも追われた。メンバー同士では対面方式を断念し、遠隔会議システムを用いて夏までは非公式の打ち合わせをおこない、9月初旬に正式のスタートアップ研究会を開催した。その後、11月、2月、3月、さらに2021年度へ課題を繰り越すことが認められたため、翌年5月、8月(2回)と全体研究会を重ねた。
初年度では、法社会学、家族法の専門家であり、同性婚合法化において主導的役割を果たしたイレーヌ・テリーの著作Mariage et filiation pour tous. Une metamorphose inachevee (Paris, Seuil, 2016)(邦訳『フランスの同性婚と親子関係』(明石書房、2019年))を出発点とした。その研究書の多角的な読解および他の研究との接続を通じて、特に20世紀中葉以降の結婚、セクシュアリティ、家族、生殖をめぐる議論や実践の変遷をたどり、各メンバーの専門分野からの視点で意見交換をおこなった。また、同性婚合法化に不可欠であるジェンダー間の平等をテーマに、ラファエル・リオジエ教授(エクス=アン=プロヴァンス政治学院教授)を囲んで遠隔方式のラウンドテーブルを開催し(2021年7月)、2021年度8月末までに初年度の実施計画をほぼ遂行した。
それ以降の期間では、野辺陽子氏(日本女子大学准教授)を招いて日仏の家族観における血縁や「自然」の考え方、ベロー教授(社会科学高等研究院)との国際研究集会で日仏のジェンダー論争と生殖医療などを取り上げ、問題を深く共有することに努めた。